この作品は、私が2014年から2019年にかけて撮影したスナップ写真群の中に必然的な繋がりを感じ、ブックとして構成したものである。撮影した時期は、ちょうど私が20代から30代へ移り変わる節目にあたり、時代は東日本大震災後の平成末期であった。自分の無力さに対する絶望感や焦燥感、先行きの見えない不安。そういった黒々としたものに心が覆われている状態が続いていた。作品を制作していくうちに、感情――平静を装い耐え続けることにより無意識の世界に押し込められた感情が、刻々と予測不能に変化するさまに強い興味を持つようになった。悲しみ、憎しみ、孤独、夢想、再生、爆発、歓喜、滅亡、超越……。のたうち回る感情の振れ幅、多様性こそ、私たち生き物に宿った野生の力なのかもしれないと思う。写真を荒い紙にプリントし、くしゃくしゃに握りつぶしたあと再度伸ばすというプロセスを設けた。それによって、いびつな陰影や手触りをブックに加え、傷つきボロボロになりながらも生き延びる野生生物のような凄みを与えようとした。(作家本人によるテキストより)
タイトル | stand |
作家 | 山口晋平 |
種類 | 手製本 |
刊行年 | 2019年10月 |
その他 | 20部限定制作 |